#23  WTO農業交渉のゆく先
■条件の悪い国々がさらに弱っている

1999年2月、WTOシアトル閣僚会議は、
フェア・トレードを求める途上国や非政府組織(NGO)の激しいデモで
合意に至りませんでした。

翌年提出した、日本提案は
『様々な国や地域に置ける多様な農業が共存できるルールの確立』というものです。

ウルグアイ・ラウンド合意後、
アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアなど輸出大国の一部の国では
農産物の輸出を拡大しました。

その一方、
日本、韓国、ノルウェー、スイス、アジア・アフリカの途上国など多くの国が
農産物の輸入を拡大しました。


日本の提案というのは、上記のような
少数の国が輸出を拡大し、輸入国がますます輸入を拡大するという、
「条件の悪い国々の農業がさらに弱っている」という実態を踏まえたものです。


今後、世界の人口が増加するにもかかわらず、
食糧生産はそれに追いつかない状況が予測されます。


各国の国土条件を考慮し、多様な農業が共存するなかで
食料の安定供給が確保される「保障」が
貿易ルールに位置づけられないといけません。



■日本はG10として共同宣言

2003年に開催されたメキシコ・カンクンのWTO閣僚会議は決裂に終わりました。

先進国の関心が強い、
・投資ルール
・競争政策
・政府調達の透明化
・貿易円滑化

の問題で途上国が激しく反発したからです。

農業問題においても、途上国、先進国、日本のような輸入国が対立しました。


ウルグアイ・ラウンド合意以降、途上国では、
先進国の農産物の輸出拡大で、
途上国の数少ない輸出市場が侵食され、
国内の市場も荒らされ、貧困の拡大が生じていたのです。


とりわけ、補助金に支えられたアメリカ綿花の輸出拡大で
大きな被害を受けたアフリカ諸国が反発し、
象徴的な問題として取り上げられました。


日本、韓国、ノルウェー、スイスなど10カ国の食糧輸入国はG10を結成し、
以下のことを主張しました。

1.上限関税を撤廃すること

2.これ以上の輸入枠の拡大はしないこと

3.国内農業生産が持っている国土保全などの多面的機能や食料安全保障などの非貿易関心事項を具体化し、食料純輸入国への配慮を新たな貿易ルールとすること


上限関税がルールになると、どんどん下げられて、
結局国内の農産物は全く競争力がなくなってしまうと考えられたからです。


また、ブラジル、中国、インド、タイ、南米諸国はG20というグループをつくり、
先進国の国内補助金や輸出補助金に反対しました。

そして、自国の農産物を輸出できるよう、高関税の引き下げを要求し、
日本をはじめとするG10には同意しませんでした。


(2008.3.19)


引用
「農と日本の再生計画」山田としお