#12 コメ再考B 農家の決断
■瀬戸際に立たされる農家
▲農水省資料などをもとに農民米菜策部作成
(生産費は全算入全国平均。
入札価格は全銘柄年間加重平均)
世界のコシヒカリ産地が日本の市場を目指す中で
今年(2007年度)、農家はかつてない事態に見舞われていました。
8月、農家の代表が集められました。
農協の担当者が、今年収穫したコシヒカリと引き換えに渡す代金を突然発表しました。
1俵60kgあたり、去年は1万5000円。
それを、1万円にするというのです。
コメが大量に余ると予測されることから、
「価格を下げないと売れない」と説明しました。
厳しい経営に追い討ちをかける、価格の引き下げ。
コメ作りをやめるかどうか、瀬戸際に立たされる農家も相次いでいます。
値下がり分で、1年間の生活費が飛んでしまう農家も多いのです。
新潟で、『新潟玉木ブランド』として、
農協を通さず独自にコメを販売している、玉木さんという農家さんがいます。
アメリカ企業のリン社長(たぶん台湾系)は、そこに目をつけ、
日本のコシヒカリをアジアの富裕層に売るのです、と持ちかけました。
「減農薬の安全性とおいしさを前面に出している点が、アジアの富裕層にアピールできる。」
玉木さんも、悩みながら
海外に販路を求めないと、生き残れないと決断しました。
「やっぱり日本人に食べてもらいたいけど
新潟から東京に売るのでも難しい中で、
海を渡ることを、やらなければならないなら、やるしかない。
難しいとか、そういうことを言っている場合ではないのだから。」
主食であるコメの市場が開放された場合、
人々の食を支えてきた農業に、何が起こるのでしょうか。
日本より自由化が進んだ台湾を見てみましょう。
■荒廃の一途をたどる台湾コメ農家
コメ生産地の、とある集落。
そこに集まっているのは、
いずれもコメ作りをやめた70代の高齢者たちでした。
安い外国産のコメが入ってきて、コメを作っても生計を立てることができなくなった人たちです。
「コメの価格は悪くなるばかりだ。ちっともあがらない。本当にかなわない。」
「どうやって生きていけばいいんだ」
ひどい状況です。
では、台湾で農業を続けられている人はどうしているのでしょうか。
台湾中部の農村をたずねてみたところ、
200人の農家が会社と契約し、その管理の下でコメ作りをしていました。
農家の一人一人に番号がつけられ、栽培の品種から栽培の方法まで、
すべて会社から支持を受けていたのです。
農家が出荷するコメも、会社から厳しいチェックを受けます。
品質が少しでも会社の基準を満たさなければ、買い取ってもらえず、
場合によっては契約を打ち切られてしまうのです。
「WTOに加盟しても、農家にとってよいことなどひとつも見つからない。悪いことばかりだ」
安い外国産のコメに負け、コメ作りを諦める農家。
生き残りのために、会社に管理される農家。
輸入の自由化は、主食を支える農家に大きな影響を与えていたのです。
リン社長は、玉木さんを連れて
一日に2000トンのコメを出荷する、台湾最大手のコメ卸売り会社を訪れました。
リン社長は、「玉木さんのコメを取り扱ってほしい」、と依頼。
すると台湾の会社は玉木さんのコメを受け入れると承諾。
そして、その場で思わぬ提案をしてきました。
「日本市場にコメを売ることは大きな意味があります。
日本に受け入れられれば、世界の最上級品と認められるからです。
日本の市場を重視していますし、日本にコメを売りたいのです。」
この会社は、台湾で作ったコメを日本に輸出したいのです。
「自分が作るコメは台湾の人が食べ、
台湾で作られた安いコメが日本人が食べることになるかもしれない。」
玉木さんの心は複雑でした。
リン社長は日本の市場開放の様子を見ながら、検討することにしました。
進むグローバル化。
世界は、コメを主食とする日本の市場が今後どこまで開放されるか、注目しています。
(2007.11.10)
参考/引用
NHK「ライスショック」
NHK「ライスショック」

