#04 バイオエタノールの弊害
■穀物インフレの影響「穀物バブル」
そう言われているのが、最近の穀物市場。
昨年から日本国内でも穀物価格が高騰して、
飼料メーカーや畜産農家の頭を悩ませています。
経営体力の弱い畜産業者の中には、
廃業に追い込まれる所も出始めているそうです。
鶏卵1kgの生産コストもこの1年で20円程度上昇。
長年「物価の優等生」と言われてきた卵にも、値上げ圧力が押し寄せています。
■高騰の背景に「爆食」国家とブッシュの策略
中国などの振興人口大国の経済発展に伴って、かなりの穀物の需要が増加されました。
世界の飼料向け需要は、
この20年で1.5倍以上、
大豆も、食用油や飼料向け消費量が約2倍になりました。
このような需要拡大構造のなかで、
2006年度はオーストラリアでの干ばつにより、小麦価格が高騰しました。
そして、さらにトウモロコシ価格の高騰。これの最大の原因は、
アメリカの「バイオエタノール」大増産計画です。
バイオエタノールとは、トウモロコシやサトウキビなどを発酵させてつくるアルコールで、
ガソリンの代替燃料として注目が集まっています。
燃えてCO2を排出しても、植物としての成長過程でいっぱいCO2吸ってるから
京都議定書においてもCO2排出量は相殺する、という決まりになっています。
2005年、アメリカでは
「2012年までに75億ガロンのエタノール生産を義務付ける!」
という新エネルギー法が成立しました。
2007年1月、ブッシュは

と一般教書演説で言いました。
これを機に、トウモロコシの主要生産地である米国中西部では、
「エタノールバブル」が始まりました。
そしてこれが、
今後我々の食卓に波及するのです。
■アメリカの国益のために
「アメリカさん、工場、いくつ作んねん?!」
ってなくらいに、今アメリカではエタノール工場がポコポコ建っているようです。
2006年2月時点では、稼動中・建設中・増設中の工場の生産能力の合計は63億ガロン/年。
ところが、
2007年4月時点で、稼動中が58.6億ガロン。建設中・増設中を含めると、計123億ガロン/年。
1年で2倍かい!!
アメリカは世界最大の農業国。
長いこと穀物余剰のために、相場の低迷が続いているので、輸出促進策をとってきました。
(戦後から近年まで、日本の給食で脱脂粉乳がでたり、主食がコッペパンだったのもそのひとつですよ。)
今回のこのエタノール需要は、アメリカの救世主みたいなものだそうです。
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ぐはっ!!
素晴らしい!
全てがアメリカの国益にかなってるよ!!
自国の石油枯渇問題や、
ドル建てで石油を売らないイランを、悪に見立てているブッシュも、
中露のここ最近の帝国ぶりで
結局イランに攻め入るその力、温存しているのではないでしょうか。
■連鎖する値上げの構造

石鹸も高くなる
ブッシュのエタノール奨励策に、相場はすぐに反応しました。
トウモロコシ価格の高騰はもちろん。
また、大豆農家も価格の高いトウモロコシに乗り換え、作付面積減少で高騰。
ディーゼル車の多いEU諸国では、菜種油やパーム油などの植物油から作るバイオディーゼル促進策を導入しており、
カナダの菜種は2年ぶりに高値がつき、
マレーシアではパーム油が2007年1月から6月で23%も増加したそうです。
■各社、小売価格を維持することはできない!
コーンスターチ。
トウモロコシのでんぷんですね。
実は色んなものに入っています。
フライものの衣や、ビールに使用されているのは知られますが、
加水分解するとブドウ糖になるので、
飴ちゃんや清涼飲料水、
また、ダンボールの接着剤、錠剤の基礎部分、点滴用剤など、
用途は食品以外にも様々に広がっています。
2007年1月、日本のコーンスターチのトップメーカー(日本食品加工)での値上げがありました。
1kgあたり10円。
4月はさらに10円の再値上げ。
すでに原料価格高騰の影響で、
同社の売上高は前年度費1.2%減。
当期利益は59.9%減りました。
「値上げしなければ存続に関わる」 限界まで様子を見ていた同社も、存続の危機に直面した結果の値上げでした。
パン用イーストもしかり。
イーストの培養に必要な糖蜜は、サトウキビから生産されます。
日本は多くの糖蜜をフィリピンから輸入しています。
そして、フィリピンは、ガソリンに5%のバイオエタノール添加が義務付けられました。
そこに回される糖蜜は、年間約70万トン!
ガソリンに対し5%といえども、
その量はフィリピンの糖蜜生産量の約8割を占めます。
加えて、中国の富裕層が増え、食生活の多様化から、
糖類の需要が増えていることも、糖蜜の確保を厳しくしています。
日本国内での糖蜜の輸入価格は2005-2007で1.8倍に高騰しました。
値上げは17年ぶりです。
食用油の高騰が原因で、キユーピーも17年ぶりに値上げを行いました。
商品の値上げに至らなくても、特売の回数は減りました。
■「値上げ防波堤」が決壊した
缶ビール用のアルミや段ボール、麦芽の輸入コスト、コーン由来原料…
2007年度の原材料費増加額を70億円と見込んでいたキリンビールは、
すでに10億円上方修正しました。
キリンビールは3年間のリストラで90億円のコスト削減を行いました。
値上げの影響は、こんなところにも出るのです。
日清製粉など製粉大手3社は2007年4月、業務用小麦価格の値上げに踏み切りました。
実に、24年ぶり。
輸入小麦粉は、国内総需要の9割を占めます。
その価格は、過去59年、政府によって1年ごとに固定されていました。
しかし、2007年4月から国際相場に合わせて年3回改定することになりました。
従来は輸入価格に一定額を上乗せし、差益は国内農家の助成金に充てられていたのです。
しかし、これでは相場の急騰で補助金の財源が減少する…
急変する穀物相場によって、59年間続いた制度が崩壊しました。
■トウモロコシが買えなくなる
日本はトウモロコシの輸入の94%をアメリカに依存しています。
そして、アメリカも「世界のトウモロコシの全輸出量の7割」を占めているトウモロコシ大国です。
中国では、米とトウモロコシは基本的に自給しますが、
肉の消費量が拡大した場合、その飼料であるトウモロコシを、自給できるのでしょうか。
トウモロコシの輸入先が米国に限られ、
その米国ではトウモロコシの相当量がエタノールになり、
中国もトウモロコシの輸入国になる恐れがある
天候異変による不作が起これば、日本人のトウモロコシ摂取率は劇的に下がるでしょう。
黄色いダイヤ。
トウモロコシはそんな高級野菜への一歩を踏み出しました。

(2007.7.24)
参考
週刊エコノミスト6/26号/
週刊エコノミスト6/26号/

