2011年10月30日、JA越前たけふは肥料・農薬の購買やコメなどの農産物販売といった経済事業について、「経済連」から離脱し、独自で手がける方針を決定した。全国初のケースである。
本来、肥料・農薬は、全農が一括調達し、これが経済連、単位農協を経て農家に届く仕組みで、逆にコメは単位農協が集荷し、それが上部団体へと流れていく。
だが、JA越前たけふはこれらの経済事業を、スーパーマーケット経営が主体の子会社「コープ武生」に2013年度に事業譲渡する。集荷したコメの販売は上部団体に頼らずに卸や消費者に直販する。
「経済連・全農は単なる取引先のなかの1社。よそより条件がよければ取引する」(冨田組合長)と、以前の絶対君主的存在から一気に“一出入り業 者”に格下げとなる。
全国の単位農協からは「どうやれば、できるのか教えてくれ」「がんばってくれ」というメッセージが殺到する事態。
農協の収益は農業ではなく、共済(保険)と信用(金融)で維持されている。赤字の農業関連事業を、黒字の金融事業で支える構造だ。農業関連の経済事業は組織維持のためのお荷物的存在と化している。
共済の総資産46兆円は業界トップの日本生命保険に肩を並べ、信用の預金残高88兆円はメガバンク級だ。
肥料・農薬などの購買事業は、安さと品揃えに勝るホームセンターに侵食され、
ガソリンなどの燃料事業は大手元売りの再編・集約化に押され、
農産物の販売事業もスーパーや外食企業による全農を通さない農家や単位農協との直接取引の拡大で縮小するばかりだ。
農薬を例にとれば、農協組織による「系統ルート」のシェアは、すでに商社やメーカーなどが卸や小売りを通じて農家に販売する「商系ルー ト」に逆転されてしまっている。一部の単位農協が、肥料・農薬などの品揃えや在庫管理などを大手ホームセンターに委託しているのは公然の秘密だ。
コメ先物を全農は集団ボイコットしている。だが、JA越前たけふは「先物市場に参加しない理由がない」と、すでに東穀商と共同で準備を進めており、いつでも上場できる体制にある。
JA越前たけふはもともとアンチ中央の農協だったわけではなく、ごくごく平凡な農協だ。すべては、「上部団体の言いなりの楽チン経営をしていた ら、つぶれてしまう」という冨田組合長の危機感で始まった。
後に続く単位農協が出るのか、変革を唱え続けながら実行できなかった農協改革が現実のものになる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)
http://diamond.jp/articles/-/15043
