TPP、制度改革…、“平清盛”的「国富論」が日本を救う

TPP、制度改革…、“平清盛”的「国富論」が日本を救う

■市場経済「規制緩和」
交渉に応じたら米国に蹂躙されるから入らないという選択肢は、
国際化の時代には通用しない。
外圧を受けるまで必要な国内制度の改革を怠ってきた日本政府にその責任の一端もある。

 

平清盛は、特定の利権と結び付いていた中国との貿易のやり方を変えて、
一般庶民が中国と貿易できたら豊かになると考えた。まさに現在のTPPの議論そのもの。
織田信長の「楽市・楽座」もそう。
戦後、日本が豊かになれたのは自由貿易のおかげ。

 

世界市場で競争する製造業は西ドイツ型の市場経済だが、
政府に保護された農業・サービス業は、東ドイツ型の社会主義に近い。
今まで日本経済を支えてきた製造業が、
グローバリゼーションの流れの中で海外に移転する比率が高まるとともに、
生産性の低い産業分野が国内で相対的に大きくなった。
製造業の空洞化を埋めるためには、農業、サービス業にも製造業と同じような市場経済を導入する必要がある。

 

もともと日本のコメへの評価は高く、世界的な農産物価格上昇の下で、
減反というカルテル政策を止めれば対外競争力は決して低くない。
農家が生産を増やし輸出産業化を目指せば食料自給率も高まる。
減反にではなく価格低下への所得補償が本来の農業政策。
コメが輸出産業になれば、農業の雇用も増え、農村地域も活性化する。

 

農協は日本の農村における事実上の独占資本のようなもの。
ごく最近まで、農業関係はもとより金融・保険業に至るまで多くの事業を独占していた。
また、1地区1農協で、農家は特定の農協としか取引できない。
外国の農協は、互いに地区を超えて競争があるのが本来の姿だが、
日本では完全に競争を排除する体制になっている。

 

今農協と対抗できるのは大規模専業農家ぐらい。
どこの国も農業保護はしているが、それは主として専業農家の保護。
日本のように生産性の高い専業農家に大幅な減反を強いて痛めつけるような農業政策の国はない。

農協が零細農家相手のビジネスにとどまるのではなく、
全国のネットワークを生かして、農地を集積し、生産性の高い大規模農業を展開したり、
食料の安定供給のために、海外への直接投資を積極的にすれば一番いいのだが。

 

■耕作放棄地「規制強化」

なぜ自分が農業をする気がないのに、
専業農家に農地を売ったり貸したりしないのか。
それは今の農地は、持っていてもほとんどコストがかからない。
固定資産税も安いし、相続税もほとんどかからず、
子どもに財産分与するには農地のまま相続させたほうがいいから。

 

耕作放棄地は歴然たる農地法違反。固定資産税の優遇をなくすとともに、
他の農地への悪影響を防ぐためにも農地法違反として課徴金を課すべき。

 

90年代には、農産物生産額と農地を転用し売却した収入額が大差ない状況となっていた
(農地自体の価格は低いが、宅地や道路などに転用されたら大幅に高まるため)。
耕作放棄地として土地を保有するコストを高めなければ、
専業農家に貴重な農地が集約されない。

 

農業の生産性を高めるための規制緩和と規制強化、構造改革には両方必要なわけです。

 

外圧がないと、既得権を持つ団体の反対が強力で、大きな構造改革が進まない。
国際条約に参加し、外圧を自らつくり出すことで改革を進める必要がある。

 

 

八代尚宏・国際基督教大学客員教授インタビュー

http://snip.it/snips/138072